基本情報技術者試験の勉強を始めたばかりの方にとって、ネットワーク分野は「カタカナや略語が多くてとっつきにくい」と感じる分野の一つではないでしょうか。TCP/IP、サブネットマスク、DNS……。初めて目にする用語ばかりで、テキストを開いた瞬間に心が折れそうになった方もいるかもしれません。しかし、ネットワークの用語は日常的に私たちが使っているインターネットの仕組みそのものです。身近な例に置き換えて理解すれば、決して難しくはありません。本記事では、基本情報技術者試験のネットワーク分野で頻出する重要用語を、初心者にも分かりやすく丁寧に解説していきます。
ネットワークの基本を押さえよう|まずは全体像を理解する
用語の暗記に入る前に、まずネットワークの全体像をつかんでおきましょう。ネットワークとは、複数のコンピュータやデバイスが互いにデータをやり取りできるようにつないだ仕組みのことです。私たちが毎日使っているインターネットも、世界規模の巨大なネットワークの一つです。基本情報技術者試験では、このネットワークがどのような仕組みで動いているのか、その構成要素や通信ルールを問う問題が出題されます。
LAN(ラン)とWAN(ワン)

ネットワークは規模によって大きく2つに分類されます。LAN(Local Area Network)は、オフィスや家庭など限られた範囲のネットワークです。学校の教室内にあるパソコン同士をつないだネットワークがまさにLANです。一方、WAN(Wide Area Network)は、離れた拠点同士をつなぐ広域のネットワークです。東京本社と大阪支社をつなぐネットワークはWANにあたります。インターネットは世界最大のWANとも言えます。試験ではLANとWANの違いや、それぞれに使われる技術について問われることがあるので、まずこの区分をしっかり覚えておきましょう。
プロトコルとは「通信のルールブック」

ネットワークの世界で最も重要な概念の一つがプロトコルです。プロトコルとは、コンピュータ同士がデータをやり取りする際に守るべきルール(通信規約)のことです。人間同士が会話するとき、同じ言語を使い、挨拶から始めて本題に入るという暗黙のルールがありますよね。コンピュータも同じで、データの送り方、受け取り方、エラーが起きたときの対処法など、あらかじめ決められた手順に従って通信しています。このルールがプロトコルです。基本情報技術者試験では、さまざまなプロトコルの名称と役割が出題されるため、一つずつ確実に押さえていきましょう。
OSI参照モデルとTCP/IPモデル|通信の階層構造を理解する
OSI参照モデルの7階層

ネットワーク通信を理解するための基本的な枠組みが、OSI参照モデルです。これは国際標準化機構(ISO)が策定した通信の理論モデルで、通信機能を7つの層(レイヤー)に分けて整理したものです。下から順に、第1層:物理層、第2層:データリンク層、第3層:ネットワーク層、第4層:トランスポート層、第5層:セッション層、第6層:プレゼンテーション層、第7層:アプリケーション層となります。
覚え方としては、「物(物理)・デ(データリンク)・ネ(ネットワーク)・ト(トランスポート)・セ(セッション)・プ(プレゼンテーション)・ア(アプリケーション)」と頭文字を並べて語呂合わせにする方法が有名です。試験では各層の役割と、それぞれの層で動作するプロトコルや機器を結びつける問題がよく出ます。たとえば、ルータは第3層(ネットワーク層)、スイッチングハブは第2層(データリンク層)で動作する機器です。
TCP/IPモデルの4階層

OSI参照モデルが理論的な枠組みであるのに対し、TCP/IPモデルはインターネットで実際に使われている通信モデルです。こちらは4つの層で構成されます。下から順に、ネットワークインタフェース層、インターネット層、トランスポート層、アプリケーション層です。OSI参照モデルの7層をシンプルに4層にまとめたものと考えると分かりやすいでしょう。実務的にはこのTCP/IPモデルのほうが重要であり、試験でも頻繁に出題されます。
OSI参照モデルとTCP/IPモデルの対応関係はこのようになります。

頻出プロトコルを一つずつ丁寧に解説

IP(Internet Protocol)
IPは、データを送る相手の住所を指定して届ける役割を担うプロトコルです。郵便に例えると、封筒に宛先住所を書いて郵便局に渡す仕組みに似ています。IPでは「IPアドレス」という番号を使って通信相手を特定します。現在主流のIPv4では「192.168.1.1」のように4つの数字をドットで区切った形式で表されます。IPv4のアドレス枯渇問題を解決するために登場したのがIPv6で、128ビットの広大なアドレス空間を持っています。
TCP(Transmission Control Protocol)とUDP(User Datagram Protocol)
TCPとUDPは、どちらもトランスポート層で動作するプロトコルですが、性質が大きく異なります。TCPは「信頼性重視」のプロトコルです。データを送る前に相手との接続を確立し(3ウェイハンドシェイク)、データが正しく届いたかを確認しながら通信します。メールの送受信やWebページの閲覧など、データの欠落が許されない場面で使われます。
一方、UDPは「速度重視」のプロトコルです。接続の確立や到達確認を行わないため、通信が高速です。動画のライブ配信やオンラインゲームなど、多少のデータ欠落よりもリアルタイム性が求められる場面で使われます。試験では、TCPとUDPの特徴の違いを問う問題が定番です。「信頼性のTCP」「速度のUDP」と覚えておきましょう。
HTTP / HTTPS
HTTP(HyperText Transfer Protocol)は、WebブラウザとWebサーバの間でデータをやり取りするためのプロトコルです。普段Webサイトを閲覧しているとき、裏側ではHTTPが動いています。HTTPS(HTTP Secure)はHTTPにSSL/TLSによる暗号化を加えたもので、通信内容を第三者に盗み見られないようにします。現在のWebサイトはほとんどがHTTPSを採用しており、URLが「https://」で始まるのはそのためです。
DNS(Domain Name System)
DNSは、ドメイン名(例:www.example.com)をIPアドレス(例:93.184.216.34)に変換する仕組みです。人間にとっては「www.example.com」のほうが覚えやすいですが、コンピュータはIPアドレスでしか通信相手を識別できません。DNSはいわば「インターネットの電話帳」のような存在です。試験では、DNSの名前解決の仕組みや、DNSサーバの階層構造について問われることがあります。
DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)
DHCPは、ネットワークに接続したデバイスにIPアドレスを自動的に割り当てるプロトコルです。自宅のWi-Fiにスマートフォンをつなぐとき、いちいちIPアドレスを手動で設定していませんよね。それはDHCPサーバが自動でIPアドレスを配布してくれているからです。試験では、DHCPの役割や動作の流れを問う問題が出題されます。
SMTP / POP3 / IMAP
これらはメールに関するプロトコルです。SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)はメールを送信するためのプロトコル、POP3(Post Office Protocol version 3)はメールサーバからメールを受信(ダウンロード)するためのプロトコルです。IMAP(Internet Message Access Protocol)もメール受信用ですが、POP3と異なりサーバ上にメールを残したまま管理できるのが特徴です。複数のデバイスでメールを同期したい場合はIMAPが便利です。
IPアドレスとサブネットマスク|ネットワーク設計の基礎

IPアドレスのクラスとプライベートアドレス
IPv4アドレスは32ビットの数値で、ネットワーク部とホスト部に分かれています。クラスA、クラスB、クラスCの3つが代表的で、クラスによってネットワーク部とホスト部の境界が異なります。クラスAは大規模ネットワーク向け、クラスCは小規模ネットワーク向けです。
また、インターネット上で直接使えるグローバルIPアドレスと、組織内ネットワークで使うプライベートIPアドレスの区別も重要です。プライベートIPアドレスの範囲(10.0.0.0〜10.255.255.255、172.16.0.0〜172.31.255.255、192.168.0.0〜192.168.255.255)は試験でよく問われるので、しっかり覚えておきましょう。
サブネットマスクの役割
サブネットマスクは、IPアドレスのどこまでがネットワーク部で、どこからがホスト部かを示すための値です。たとえば「255.255.255.0」というサブネットマスクは、上位24ビットがネットワーク部であることを意味します。サブネットマスクを使うことで、一つのネットワークをさらに細かく分割(サブネット化)でき、ネットワークの効率的な管理が可能になります。試験ではサブネットマスクからホスト数を計算する問題がよく出るので、2のべき乗の計算に慣れておくと有利です。
ネットワーク機器の役割を整理しよう

リピータとハブ
リピータは、弱くなった電気信号を増幅して中継する物理層の機器です。ハブ(リピータハブ)は複数のポートを持つリピータで、受け取ったデータをすべてのポートに転送します。現在はほとんど使われていませんが、試験では基本知識として問われます。
スイッチングハブ(L2スイッチ)
スイッチングハブはデータリンク層で動作し、MACアドレスをもとにデータを適切なポートにのみ転送します。ハブのように全ポートにデータをばらまかないため、ネットワークの効率が大幅に向上します。
ルータ
ルータはネットワーク層で動作し、異なるネットワーク同士を接続してデータを最適な経路で転送する機器です。IPアドレスをもとにルーティング(経路選択)を行います。家庭のWi-Fiルータも、自宅のLANとインターネット(WAN)を接続するルータの一種です。
ネットワーク分野の学習は用語の量が多く、独学では行き詰まりやすい分野でもあります。体系的に学べる教材を活用すると、理解のスピードが格段に変わります。
おすすめの基本情報学習教材はこちらセキュリティ関連のネットワーク用語

ファイアウォール
ファイアウォールは、外部ネットワーク(インターネット)と内部ネットワーク(社内LAN)の間に設置し、不正なアクセスを遮断する仕組みです。「防火壁」という意味の名前が示すとおり、外部からの攻撃や不正通信をブロックしてネットワークを守ります。パケットフィルタリング型やアプリケーションゲートウェイ型など、いくつかの方式があります。
NAT(Network Address Translation)とNAPT
NATは、プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスを相互に変換する技術です。これにより、社内ネットワークの端末がインターネットに接続できるようになります。NAPT(Network Address Port Translation、別名IPマスカレード)は、NATに加えてポート番号も変換することで、一つのグローバルIPアドレスを複数の端末で共有できる仕組みです。家庭のルータでも広く使われており、試験でも非常に頻出の用語です。
VPN(Virtual Private Network)
VPNは、インターネット上に仮想的な専用線を構築し、安全に通信を行う技術です。暗号化やトンネリングといった技術を使って、公共のネットワーク上でもプライベートな通信を実現します。リモートワークの普及に伴い、実務でもVPNの知識は必須となっています。
通信の流れイメージ
最後に実際の通信の流れについて、Webページを閲覧する際を例としてわかりやすく説明します。

通信はこのような流れで行われています。ここまでで扱った技術がどういうふうに用いられているかがイメージできたでしょうか。
試験対策のポイント|ネットワーク分野を得点源にするために
用語の丸暗記ではなく「役割」と「関係性」を理解する
ネットワーク分野で一番やってはいけないのが、用語だけを丸暗記しようとすることです。たとえば「DNSはドメイン名をIPアドレスに変換する」と暗記するだけでなく、「なぜ変換が必要なのか」「DNSがなかったらどうなるのか」まで考えると、記憶が定着しやすくなります。
図を描いて整理する習慣をつける
ネットワークの仕組みは、図に描くと一気に理解しやすくなります。OSI参照モデルの7層を縦に並べ、各層に対応するプロトコルや機器を書き込んでいくと、全体の関係性が見えてきます。手書きでもよいので、自分なりの図を作る習慣をつけましょう。
過去問で出題パターンを把握する
基本情報技術者試験は過去問からの類似出題が多い試験です。ネットワーク分野でも、IPアドレスの計算問題やプロトコルの特徴を問う問題は繰り返し出題されています。最低でも直近5回分の過去問には目を通し、出題パターンに慣れておくことをおすすめします。
まとめ
本記事では、基本情報技術者試験のネットワーク分野で頻出する重要用語を、初心者の方にも分かりやすいように丁寧に解説しました。LAN・WANの基本から、OSI参照モデル、TCP/IP、各種プロトコル、IPアドレスとサブネットマスク、ネットワーク機器、そしてセキュリティ関連の用語まで、試験に直結する知識を幅広くカバーしています。
ネットワーク分野は一見難しく感じますが、日常のインターネット利用と結びつけて理解すれば、着実に得点源にできる分野です。大切なのは、用語を「点」で覚えるのではなく、仕組み全体の中での「役割」と「つながり」を意識して学ぶことです。焦らず一つずつ積み上げていきましょう。
おすすめの学習教材はこちら基本情報技術者試験の合格を目指す皆さんを、心から応援しています。ぜひ本記事を繰り返し読み返して、ネットワーク分野の知識を確かなものにしてください。


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